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2026-06-01

病気を撮るのではない。障がいを撮るのでもない。その人自身を撮る。

先日、19歳の男の子の撮影に伺いました。

彼は、がんと闘っていました。

お母さんからご連絡をいただいた時、病状は急激に進行しており、余命は数週間とのことでした。

依頼内容は、
「病院で家族写真を撮ってほしい」
そして、
「彼女との写真も撮ってほしい」
というものでした。

お母さんとお話しした時、正直、かなり心を揺さぶられました。

「自分に本当に撮れるのか」
そんな迷いも、一瞬ありました。

でも、不思議なことに、その数秒後には気持ちが切り替わり、

「絶対に自分が届ける」
「自分が撮りきる」

そんな強い使命感が湧いてきました。

こういう依頼をいただくたびに思います。

写真は、ただ綺麗に撮ればいいわけではない。
技術的に上手く撮るだけでも足りない。

この家族が何を残したいのか。
5年後、10年後に写真を見返した時、何を思い出してほしいのか。
どんな時間として心に残ってほしいのか。

その時間を、どう未来に残すのか。

そこが問われている気がしています。

【自分を取り戻す。】

今回の撮影で、忘れられない瞬間がありました。

抗がん剤の影響で、彼の髪は抜けていました。
もともとウィッグをつくっていました。

でも、ただ被れればいいわけじゃない。

大切なのは、
どれだけ“本来の彼”に近づけるか。

その想いに応えるために、美容師の廣田さんが細かく調整を重ねてくれました。

髪の長さ。
形。
全体の雰囲気。

過去の写真を見ながら、細かな部分まで一つひとつ丁寧に整えていきました。

そして、ウィッグを被った瞬間。

彼の表情が変わりました。

「あ、これだ」

そんな声が聞こえてきそうな表情でした。

目に、力が戻る。
表情が変わる。

そして、
自分を取り戻す。

その瞬間を、確かに感じました。

病気によって、少しずつ奪われていくものがある。

でも、その瞬間だけは違いました。

そこにいたのは、病気と闘う患者さんではなく、
“彼自身”でした。

【そこにいたのは、一人のドラマーだった。】

撮影前の打ち合わせで、お母様からこんな言葉がありました。

「できれば、ドラムを叩いている姿も撮れたら…」

彼は、軽音楽部でドラムを担当し、全国大会にも出場。
高校3年間、ドラムに打ち込んでいたそうです。

その話を聞いた時、思いました。

私にできることは、撮影だけじゃない。

この時間を最高のものにするために、
必要なことは全部やる。

そう決めて、ドラムセットを借り、撮影場所へ持ち込みました。

撮影当日。

彼は静かに、ドラムの前に座りました。

スティックを握る。

そして、叩き始めた瞬間。

空気が変わりました。

表情が変わる。
目が変わる。

その瞬間、そこにいたのは、
患者さんではありませんでした。

一人のドラマーがいました。

好きなものに向き合う時、
人は、その人らしさを取り戻す。

病気や障がいが、その人のすべてではない。

その人には、好きなものがある。
夢中になれるものがある。
積み重ねてきた人生がある。

私は、それを写真に残したいと思っています。

【私が写真で残したいもの】

今回の撮影を通して、改めて強く感じたことがあります。

写真は、ただ姿を残すものではない。

その人がどう生きたのか。
何を大切にしていたのか。
どんな人生を歩んできたのか。

それを未来に残していくものなんだと思います。

病気を撮るのではない。
障がいを撮るのでもない。

その人自身を撮る。

患者としてではなく、
障がいのある子としてでもなく、

その人自身を残したい。

私が届けたいのは、綺麗な写真だけではありません。

写真撮影という時間を通して、
その人らしさが輝く瞬間をつくること。

そして、その時間そのものを、
未来につながる大切な記憶として残すこと。

これからも、一人ひとりの人生に向き合いながら、
シャッターを切り続けたいと思います。

心に残る体験が、
その人や家族の未来につながると信じて。

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